技術の会社が挑む 「エアリーク0工場」

自動車用小物バネのトップメーカーである株式会社東郷製作所は1881年に創業。創業当時は主として農機具を製作していましたが、強度や耐久性を求め熱処理や塑性加工などの技術を獲得していきます。受け継がれた技術をもとに、1940年以降には自動車専用小物バネの製造に着手。現在ではトップメーカーとして国内5工場、海外に4工場を展開しています。本記事では、技術力を強みとする東郷製作所が取り組むカーボンニュートラルについて、生産技術部設備技術課・藤川氏にお話を伺いました。

工場内の騒音がエアリークの発見を困難に
東郷製作所の代表的な製品として、ホースクランプ、バルブスプリング、ダンパースプリングなどがあります。ホースクランプは、1972年に世界で初めて東郷製作所が開発した部品で、国内シェア約70%、海外シェア約30%を誇ります。

これらに共通するのは、小さな部品ではあるものの、求められる特性を再現する高い技術力が必要であるということ。過去には、熱処理品質向上のため量産化実績のない技術にも果敢に取り組んで自社開発にこぎつけたことがあり、まさに東郷製作所の「成長し続けるために挑戦を続ける」姿勢が表れています。そうした歴史、企業文化の中「エアリーク0工場」という目標を掲げ、対策に取り組んだのが、藤川氏です。
入社以来生産技術畑を歩んできましたが、装置そのものの省エネ化に取り組んでいたという背景もあり、昨年の設備技術課への異動を機に、設備のカーボンニュートラル対策に着手しました。


藤川氏:「エアリーク対策は製造現場のTPMの一環としてベテランの専門保全員が行っていましたが、工場としてカーボンニュートラルを推進していくには現場と連携した自主保全活動が欠かせないと考えます。」とはいえ簡単なように見えるエアリークの発見も、実際はベテランが経験をもとに探していくという技術と経験を求められる作業でした。加えて工場内の騒音もエアリークの発見を困難にしていたと続けます。


藤川氏:「我々の工場では、プレス機やフィーダー類が数多く稼働しており、耳栓が欠かせない環境。音漏れ箇所を特定することは、ベテランの専門保全員でも時間がかかる非常に厄介な課題でした。」一筋縄で行かないように見えたエアリーク対策でしたが、「エアリーク0工場」という構想実現にむけて、騒音の問題点を克服できないかと考える中で出会ったのがグループ会社の(株)むろらん東郷から借用した、産業用音響カメラ「FLIR Si124LD Plus」でした。藤川氏は、その有効性を肌で感じたと言います。


藤川氏:「初めて使用したとき、経験がない作業員でも簡単に、スピーディーにエアリークを見つけられると実感。そこで早速、弊社でも導入の検討を開始しました。

ベテラン設備保全員とSi124LD Plusを持った作業員で競争
藤川氏:導入にあたってはFLIRありきではなかった、と藤川氏は話します。「もっとも測定効果の高い器材を選定するため、白紙の状態からあらゆる器材の検討を始めました。当初良いと感じたSi124LD Plusについて、本当に測定効果が高いのか検証するべく、ベテランの設備保全員と、Si124LD Plusを持った経験の浅い作業員でエアリークを探す競争を行いました。その結果、無音環境だとイーブンだったものの、騒音下ではSi124LD Plusを持った経験の浅い作業員が勝ったのです(表1)。

現場検証により器材導入の有効性が実証されたことから「エアリーク0工場」の実現に向けた器材選定が始まりました。
その際もっとも気を配ったのが「現場の担当者目線で見た使いやすさ」だったと藤川氏は語ります。様々な製品を試す過程で、「騒音をリークと誤判定してしまうもの」「測定箇所ごとにカメラの調整が必要なもの」等があることがわかり、最終的に騒音からエアリークを自動識別するフリアーの製品が候補に残りました。

 

新しい器材の導入には費用対効果の裏付けが必要でしたが、藤川氏は実証試験を通して、これだけ簡単にエアリークが見つけられるのであれば十分にペイできる、と踏んだそうです。TPM活動により、毎年製造現場からエア漏れの報告事例が上がってきていたこともあり、カーボンニュートラルの報告を音響カメラでできれば、現場の作業効率化や時短促進にも寄与して喜ばれるのではないかとも考えたと語ります。
そしてこれらの選定、導入プロセスを経て最終的に選ばれたのが、現場の支持を集めたFLIRSi2-LDでした。他の製品で発生した誤判定がないことに加え、騒音の影響を排除するノイズキャンセル機能 (写真3)や距離の自動検出など、初めて使う人にもストレスを感じさせない点を重視。また、高倍率と高画質を両立したズーム機能により、天井など高所の1次側配管を確認する際に高所へ登らなくても済む点(写真4) や、広範囲を明るく照らすLED照明(写真5)など、専門保全員にもとっても利便性の高い機能が決め手となりました。

 

(写真3)ノイズキャンセルの効果。東郷製作所の製造現場は耳栓が必要な環境だが騒音はノイズキャンセルにより除去されていることが確認できる。

 

 

(写真4)Si2の光学ズームは、拡大時の画質に優れているため、エア漏れ箇所の特定が容易

↑標準画角時

↑8倍ズーム時

 

(写真5)Si2に搭載されているLEDは配光と輝度を最適化し、ヘッドライトより広範囲に暗部を照らすことが可能

 
東郷製作所は国内に約450台の設備があるため、Si2により、これら設備の年次点検、調査で大きく工数低減ができるのではないかと藤川氏は見込んでいます。導入検証においてすでに70~90%の時間短縮が実現できたという結果が出ており、今後製造現場がスムーズに導入、活用できるよう、カーボンニュートラル推進担当者と製造現場の担当者で運用方法を作りこんでいます。
藤川氏:『エアリーク0工場』という目標に向け、製造現場の自主保全員と専門保全員が連携し、カーボンニュートラル活動推進のきっかけとしてSi2-LDを積極的に活用していきたいと考えています。

使用製品:産業用音響カメラ FLIR Si2-LD 詳細はこちら

 

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