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1952年に創設された日本大学円陣会。もともとは自動車研究室を主体としたサークルで、創設当初は自動車メーカーと共同研究を行っていたという記録が残っています。1980年以降は、ガソリン1Lあたりの走行距離を競うエコマイルチャレンジや、有志によりラリーに参戦。2000年、2001年にそれぞれカウル製作、アルミフレーム製作で米国Formula SAEに参戦するなどしてきました。
日本大学円陣会は、「未来博士工房」という学生プロジェクトの1グループとして大学から予算や活動場所などの支援を得ることができたこともあり、学生フォーミュラ2003年プレ大会以降、日本の学生フォーミュラ大会にすべて出場している、数少ない大学チームの一つとなっています。
本記事では、マシン開発にFLIR T540を活用し、さらなる上位を狙う日本大学円陣会・壹岐氏(写真1)にお話を伺いました。

(写真1)日本大学円陣会 壱岐氏
日本大学円陣会はかつては50位前後と低迷していたものの、プロジェクトの見直しにより近年は
19位、26位、16位と安定して20位前後を維持しています。その背景には、学生間のつながりやOBの協力があり、コロナ禍でも技術を失わず乗り越えました。
「上位進出にはマシン製作やパーツ開発への没頭、試走時間の確保が鍵」と壹岐氏は語ります。上位校と中堅校では試走距離に大きな差があり、経験値とデータの蓄積が重要です。円陣会のマシンは、車体ロール量を制御するサスペンション機構(POU)や高出力を追求したエンジン設定を採用し、野心的な仕様となっています(写真2)。

(写真2)円陣会の車体
壹岐氏はFLIR T540をタイヤの発熱解析(最適なキャンバー角の確認)(写真3)やブレーキ状況の確認に使用する予定でしたが、エンジン設定にも有効であることが分かりました。


(写真3)
左:走行前 Rear Right 右:走行後 Rear Right


左:走行前 Front Left 右:走行後 Front left
壹岐氏:市販車は様々な使用状況を想定し、エンジンの出力にマージンを持たせていますが、レーシングカーのエンジンはパフォーマンスを最優先にします。混合気の燃焼タイミングを早めると出力に有利ですが、タイミングが早すぎるとノッキングを引き起こし、最悪の場合は故障につながることがあります。逆に燃焼タイミングが遅れると、エネルギーが排熱として失われ、出力が得られなくなります。進角調整の結果はシャシーダイナモの出力線図に数値として現れますが、出力と排気系の温度変化の関係に着目し、排気系統の動画解析(写真4)を行ったところ、解析結果は出力線図と見事にリンクしました。

業務用サーモグラフィカメラ FLIR T540
FLIR T540は本格的な研究開発向けの高性能カメラですが、簡略化されたインターフェースを
持つ解析用ソフトウェア「Thermal Studio Pro」を使用することで、現場で直感的にスピーディーに、測定結果をアウトプットすることができます。
円陣会では今後、マシンの低重心化を図るためにオイルパンを自作する計画があるとのこと。
その際、エンジンの冷却能力が十分であるかどうかを検証するためにも、FLIR T540を活用していく予定です。
(写真4)マフラー集合部温度


左:進角変更前 右:進角変更後
角変更後、マフラー集合部の温度が下がったことが確認できた。排熱が有効な出力として使用されている。


左:マフラー温度 右:集合部の時系列温度出力データ
エンジンのセッティングに加えて、放熱効果の確認にもFLIR T540を応用できると壹岐氏は続けます。塗装によりワークの比表面積を広げ、積極的に放熱する高機能塗料HDPの施工前後をFLIR T540で比較することで、放熱効果が確認できました。


いずれも同等の走行負荷後の温度を測定。メッシュ部で塗装後に約8℃の放熱温度の増加が確認できた。